森と暮らしがこれからもずっと続いていくために。 森の恵みのレシピや持続可能な社会をつくっていくために知っておきたいことをまとめた小さなweb事典です。
アグロフォレストリーとは
アグロフォレストリーとは、【農業/agriculture】と【林業/forestry】を掛け合わせた言葉。日本では、森林農業や農林複合経営などといわれています。1つの種類の植物を育てるのではなく、マホガニー(材木)やバナナ、胡椒やカカオなどを一緒に育てることで、森を切り拓かずに森を作りながら副産物を収穫することができる農業の手法のことです。
【agroforestry/アグロフォレストリー】の概念はカナダの国際開発調査センターの林学者ジョン・ベネ氏の研究から生まれました。元々、世界各国で脈々と受け継がれてきた伝統的な土地利用の方法です。
刻一刻と、消えている森林
世界最大の面積を誇る熱帯雨林、アマゾン。多様な種類の鳥、虫、動物、植物などがその森で暮らしており、”生命のゆりかご”とも言われています。
しかし、農場や牧場を作るために大規模な森林伐採を繰り返した結果、30年間で約2割近い森林が無くなってしまいました。面積でいうと約66万k㎡。これは日本の面積の約2倍です。
今から15年前の2007年、国際自然保護NGOである世界自然保護基金(WWF)は、「森林破壊と気候変動によって2030年までに、アマゾンの熱帯雨林の最大60%が消滅または破壊される可能性がある。そして、世界各地に連鎖的に影響を及ぼす。」と警告する報告書を発表をしています。
しかし、森林破壊はなかなか歯止めがかかっていません。ついには、2021年期(20年8月~21年7月)に失われた熱帯森林の推定面積が、過去15年間で最大の焼失面積(長野県の面積に匹敵する13,235 k㎡ )になったそうです。
荒廃した森林がよみがえる、アグロフォレストリー
そんな中、ブラジルのトメアスで行われているアグロフォレストリーの取り組みが、世界的にも注目を集めています。トメアスは、日系人が多く暮らしている地域です。
1929年、日本人移民がブラジルのトメアスに入植。当時、「黒いダイヤ」と呼ばれ高値で売買されていた黒コショウの栽培に成功し、莫大な富を得ます。しかし、病原菌の影響で黒コショウが次々に枯れはじめ、生産量が激減。黒コショウの栽培に携わっていた人は、大打撃を受けます。しかし、ひとつの作物で失敗しても他の作物で補えるよう試行錯誤した結果、色んな植物を複合的に栽培するアグロフォレストリーの技術が確立されていきました。
その結果、安定的な収入を得られるようになり、現地での雇用創出にもつながっています。また、トメアスではアグロフォレストリーによって約20,000haもの荒廃地が再生されているとのこと。
トメアスで栽培されているアサイーを使ったジュースなどは商品化され、日本で飲むこともできるんですよ。(株式会社フルフッタ Products)
アグロフォレストリーは、森を育みながら食糧も生産をすることができる、環境に負荷の少ないサスティナブルな農法です。また、同じ種類の野菜ばかりを育てるのではなく、色んな種類の植物を同時に育てていくため、万が一、病気などで作物がダメになったとしても、他の作物などで収入を得ることができます。
多品種を少しづつ育てていくため、事業が軌道になるまでにかなりの時間と労力を要しますが、土を肥やし、森をつくり、食料を生み出す方法は、長い目で見た時に、私たちに最も必要な農法の1つなのではないでしょうか。