基本の木会議とは?
2か月に一回のペースで開催される、やまとわ全体のミーティング。テーマも開催場所もその時の担当者が自由に決めることができます。それぞれの拠点で働いているスタッフが一堂に集い、その時のテーマでディスカッションしたり、勉強をしたりしながら、スタッフひとりひとりのスキルアップを図るものです。
9月30日に第18回基本の木会議を行いました。テーマは“やまとわの森を歩こう”。
台風の接近でお天気が心配でしたが、当日はとっても良いお天気に恵まれフィールドワーク日和。36officeがある周辺の歴史を学ぶとともに、36officeの隣にある最も身近な森について知ることを目的に、楽しみながら気持ちよく森を歩きました。
まずは、今回の担当者が36officeがある伊那市西箕輪与地周辺の歴史について話をします。
与地という地名の由来は、「よじ登る」から来ており、急斜面が多いことを示しています。
約5500年から4500年前の縄文時代の土器片が与地原遺跡から数点見つかっていること、御射山神社と八坂社の建立時期について、戦国時代には多くの合戦の場であったこと、そして木曽の古畑権兵衛が馬と人間が一緒に通れるように鍋掛峠を整備したことなど説明がありました。
与地含め西箕輪の歴史を辿ると“水との戦いの歴史”といえます。西箕輪の中でも、与地、上戸(あがっと)、中条、大萱の4地区は特に水に困っていた地域です。南側に流れる小沢川の上流の北沢川から水を引こうとしますが、もともと小沢川の水利権を持っていた下流地域の地域がそれを許さず、記録上1730年(享保15年)から約140年にわたって水争いがありました。これは、下流地域は高遠藩であるのに対し、4地区が幕府領であったことも大きな要因だったようです。
明治に入り、廃藩置県によって筑摩県となり状況が変わりました。
まず与地が北沢川上流の平岩からの取水に成功。続いて大萱が、下流の西町地区から小沢川の水利権をゆずってもらうことで北沢川の赤岩から水をひきます。残る上戸、中条は、北沢川から取水することは難しいと考えて「山を越えた木曽を流れる奈良井川の上流 白川から水を引く」ことを考えます。取水した水をいったん川へ入れてから、他の場所で取水する「為替水」という方法を使い、木曽谷の水を北沢川に流し取水することを計画しました。1883年(明治16年)、約12キロの用水路(木曽山用水)が完成します。
しかしながら明治に完成した用水路は、12キロもあり土砂崩れや災害で被害が絶えませんでした。そのことから、1968年(昭和44年)にトンネル水路を作り、白川の水を北沢川ではなく小沢川のもう一つの上流 南沢川へ落とすようになりました。この木曽山用水は、日本海へ流れる奈良井川の水が権兵衛峠を越えて南沢川(かつては北沢川)へ注ぎ、小沢川、天竜川と流れ太平洋に流れていきます。このように分水嶺を越えて取水する方法は、全国的に見てもとても珍しく他には見当たりません。(参考/木曽山用水)
歴史を学んだ後、4チームに分かれてフィールドワークのスタートです。
やまとわの森の面積は、7897㎡(約0.8ha) 。森の中の遊歩道が約900m、標高差約50m、コースタイム20分。この森を1時間弱歩きます。
与えられたミッションは「森の名前を決める」「シンボルツリーを見つける」「ネイチャービンゴ」の3つ。
ネイチャービンゴとは数字の代わりに、森の中にあるもの、例えば“食べられるきのこ” “火持ちのいい木” “哺乳類、哺乳類のフン”など 25マスに書かれているものを見つけて埋めていくゲームです。
森の中の食べられる植物に詳しいスタッフ、キノコ採り名人、iPhoneで調べるスタッフなど。それぞれの得意分野を生かしながら、チームで協力してマスを埋めていきます。
「小動物が寝ていた跡じゃない?」「このきのこ美味しそうに見えるけど、食べられるのかな?」「むかごのツルの下を掘った跡がある ! イノシシが自然薯を食べようとしたのかも。」ミッションを達成するために会話をしながら森を歩くと、思いがけない発見があったり、森を楽しむ新しいアイディアもたくさん出てきたり。
森の名前としては、“もりもりの森” “きのこの森”などがあがりましたが、すぐに決められないチームもありました。
シンボルツリーは、ふたつのグループが“ふたまたのコナラの木”をあげました。これから見守るという意味で、ヒノキの幼木をあげたチームも。
そして、ネイチャービンゴでは想像以上の数の樹木や植物、動物(の痕跡)があがり、この森の多様性を感じることが出来ました。今回のフィールドワークを基に、この森をどのように生かして行けるのか。これから何度も入ることで、新しい発見がどんどん生まれそうな魅力的な森であることに気づくことが出来ました。
歴史的背景を知ると、ここに暮らしていた人々の姿が見えてきます。36office周辺の歴史を学び、森や水と共にあった人々の暮らしに思いを馳せながら森に入ることで、身近な森が持つ魅力を深く知ることが出来たひとときでした。