基本の木会議とは?
2か月に一回のペースで開催される、やまとわ全体のミーティング。テーマも開催場所もその時の担当者が自由に決めることができます。それぞれの拠点で働いているスタッフが一堂に集い、その時のテーマでディスカッションしたり、勉強をしたりしながら、スタッフひとりひとりのスキルアップを図るものです。
11月29日に第19回基本の木会議“さあ、どうする?わたしたちと地球とSDGs”を行いました。
SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」。2015年に国連で採択された2030年の達成を目指す17の目標です。
今回は、オンラインで北海道下川町役場 政策推進課SDGs推進戦略室の清水瞳さんを講師として迎えました。下川町の取り組みを通してSDGsについて学び、ひとりひとりの未来ニュースを思い描くとともに、それに向けて自分には“一体どんなことが出来るか”について考えました。
清水さんは伊那市生まれ。幼い頃アメリカで暮らしていましたが、小中学校、高校は伊那市で過ごしています。
清水さんがSDGsに興味を持ったのは、1960年代には公害で20m先が見えないほど環境が悪化し、全米で最も大気汚染がひどい都市だったアメリカのテネシー州チャタヌーガという都市が、現在では訪れてみたい都市に選ばれるほど環境が改善され観光業が盛んな都市になっていることを知ったことだったといいます。
大学時代に北海道下川町でインターンをしたことがきっかけで、下川町役場で務めることになったという清水さん。下川町は人口3,200人。スキージャンプ場があり、葛西選手や岡部選手、伊藤有希選手が練習に励んでいたといいます。温度差が大きいところで、冬の最低気温はマイナス30度、夏は30度になるそう。
元々は岐阜県の人々が入植してきた場所でしたが、主要産業の林業の低迷や鉱山の閉鎖に伴って徐々に人口が減少していき、1980年の国勢調査で人口減少率が北海道1位、全国で4位になったほど過疎が深刻化していました。
そんな背景があるなか、下川町では古くから活用されて来た豊かな森林資源を見直し、まちづくりの基盤として様々な取り組みを行っています。
毎年、50haの木を伐って50ha木を植える。2003年にはFSC認証を取得し、町内で様々な形で木材を加工しています。また木材として利用できない枝や葉といった林地残材は、森林バイオマスとして燃やすことによって、エネルギーの自給を目指しているといいます。
また、かつて限界集落だった場所が“一の橋バイオビレッジ”として生まれ変わりました。外に出なくても暮らせるような工夫がされており、郵便局やカフェもありバイオマスの熱でシイタケの栽培も行っているといいます。現在では、起業家や木工作家など若者も多く暮らしているそう。
下川町では2001年「経済、社会、環境の調和による持続可能な地域社会づくり」をコンセプトに、SDGsの先駆けともいえるような様々な取り組みをスタートしました。現在では、2030年に下川町のありたい姿を描き “下川版SDGs”として第6期総合計画の将来像に位置づけをしているといいます。
SDGsでは「誰ひとり取り残さない」と言いますが、下川町では「誰ひとり取り残されない」という“取り残されない”にこだわり、自分ごととして取り組んでいるという点がとても印象に残りました。
清水さんのお話の後は、2,3人のグループに分かれて“未来ニュースワークショップ”を行いました。まず、2030年の目指す未来はどんなものかを想像し、それに向けてどんなニュースがあれば嬉しいかを考えて新聞の記事やTwitter、Instagramに載った状態を考えます。そしてさらに、その未来のニュースのために自分に何ができるのかを考えていきます。
全7チームそれぞれ個性豊かなニュース記事が生まれました。
■「山買いました!」
森事業部では、山を購入したというInstagramの投稿記事。いずれは、山を購入するという人や気軽に山に入る機会が増えたりすることで、山と森がもっと近くなると良いなという未来を想像しました。そのためには、身近なやまとわの森に定期的に入り、小さな変化を見つけてTwitterやInstagram、ホームページなどで情報発信していくことが今できることだと思う。
■「日本 世界幸福度で10位 懸念であった“自由度”に対する国の対策が決め手か」
最初描きたい未来が全く違ったという木工事業部のふたり。話をしていく中で、日本は若者の自殺が多いことが問題になっていて、世界の幸福度ランキングでは現在56位。ランキングにはGDPや健康寿命など6つの調査項目があるけれど、まずは“個人個人の幸福が大事だよね”ということになりました。
■「伊那谷の小学生、将来なりたい職業第1位“木こり”に」
農と森事業部では、伊那谷の小学生の将来なりたい職業で木こりがyoutuberを抑えて第1位になったというニュースがDiscover Japanに掲載されたという未来を想像しました。“金太郎プロジェクト”と名付けられたこのプロジェクトでは、やまとわが事務局となって小中学生全クラスに対応するような林業体験の授業を扱い、地域の木こりの方たちと協力しながら子供が憧れるような林業の姿を見せられる様にしていきたい。
■「木材で車が走る!木を余すところなく活用 木材の万能燃料化」
木工事業部では、経木や木製品を制作する過程で出る端材を生かしたいということで、端材を利用した燃料で車が走るようになったというニュース。自分たちに出来ることとしては、地域材を使うことや海外の材料に頼らないこと、そして端材を使ったウッドボイラー利用の情報発信をしていきたい。
■「日本全国のスーパーの総菜売り場のパックが、全部地元の経木で出来たパックになったんだって。超すごくなーい?」
総務では、スーパーの総菜売り場で使われるパックが経木で出来たパックに代わり、47都道府県すべてで使われていてそれを女子高生がTwitterでつぶやくという未来を想像しました。自分たちは、製品を作ったり営業したりすることはできないので、やまとわのスタッフが働きやすい環境を整えていくことだと思う。
■「おしゃれじゃなくてもいいんじゃない?」
おしゃれなこととは無縁だという木工事業部のふたり。おしゃれなものが注目される現代、自分たちが作った素朴な家具を見た仲里依紗(おしゃれな芸能人)が「おしゃれじゃなくてもいいんじゃない?」とTwitterでつぶやくという未来を考えました。
■「県内初 有機野菜の学校給食 伊那市内の小中学校の給食に利用される野菜の1割が有機野菜に」
農と森事業部では、有機野菜が伊那市の学校給食で使われるというニュースが信濃毎日新聞に掲載された記事。そのために、技術の向上とともに有機農業や有機野菜がなぜ良いのかについて情報発信していくことが大切だと思う。
ひとつひとつのグループの発表に対し、清水さんからコメントをもらいました。
発表が終わると、まとめとして清水さんにお話しいただいた中で一番印象に残ったのは「“SDGsウォッシュ”にならないように」ということでした。
掲げられたSDGsの目標に対して、具体的な取り組みがなされていなかったり取り組んでいるふりをしないための行動、誰かに説明できる恥ずかしい仕事でないことがとても大切だと仰っていました。
“SDGsは、かっこつけの当たり前”という清水さん。
SDGsは国連が定めている世界的な目標ではありますが、まずひとりひとりがありたい姿や描きたい未来を描き、そのために自分に何ができるのかを考えて行動することから始められるとても身近なものなのかもしれません。