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2022.10.24

木の歴史は家族の歴史。100年を超える時間をつなぐ、ものづくり

世代を超えて家族をつなぐ素敵なものづくりに関わらせていただきました。

製作した家具は、スツールと座卓の2種類。どちらも身近な家具ですが、使った木材は依頼されたご家族にとって特別なものでした。

家族とともに歴史を刻んできたふたつの木材の背景について、ご依頼主にお話を伺いました。

まず、スツールの材料は庭に生えていたアカマツ。
昭和のはじめ、依頼主のお父様が子どもの頃に庭で撮影したという古い写真を見せていただくと、このアカマツが写っています。
「親父が子どもの頃にすでにこれだけ大きいということは、樹齢100年以上だったということだよね。昔からお世話になっていた庭屋さんが来てくれていて手入れをしていたけれど、大きくなりすぎてしまって。庭が湿気っぽい感じになってしまっていたし、このまま大きくなっても後が困るだろうなとずっと思っていました。」

手入れが難しくなるほど成長してしまった松が原因で、日当たりが悪くなり荒れてしまった庭。“どうにかしないと”と思いを抱えながらも、古くから庭にあった木である上に“松を伐る”ということに後ろめたい気持ちがあったそう。
「人に言わせれば“松を伐るの ? ”って、そういうものだと思う。だから、伐ったアカマツを家具にしないかという提案をしてもらったことは、本当に嬉しかったですね。」

アカマツの伐採を行ったのは、農と森事業部のスタッフ。現場は住宅街のため、通常の伐採方法のように根元から伐り倒すことはできません。そこでロープを使って木に登り、梢の部分から少しずつ伐っていく“特殊伐採”を行いました。

その後、このアカマツをつかって4脚のスツールを製作。
伊那市まちづくりセンターにあるスツールをイメージしてのご依頼だったため、デザインはこの形をもとにしました。 やわらかいアカマツの特徴を考慮しながら、座面と脚をつなぐ部分を工夫。個性的な木目を生かし、ひとつひとつが特徴のある座面になりました。

「伐るだけでなくて、それをつかって何かつくるということにつながったことが本当にありがたかったです。」
アカマツを伐ることに対して持っていた何となく後ろめたい気持ち。伐ったアカマツをスツールという形で残せたことが、その気持ちを和らげてくれたといいます。

大きくなりすぎたアカマツを伐ったことで、日が入るようになった庭にも変化があったそう。
「庭がとっても明るくなったよね。金木犀がこんなに花をつけたのは初めてですし、日当たりが全然違う。ツツジも、ものすごく元気になりました。」

軒下に長い間置かれたままだった古い木材。これは、依頼主のお爺様が建てた家で使われていたケヤキの大黒柱でした。ご自身も子どもの頃に暮らした家でしたが、約20年前に現在お住まいの家を建てるために解体されたといいます。

「壊した家は正確に何年前に建てたのかは分からない。でも、100歳過ぎで亡くなった親戚が“俺はこの家で生まれたんだ”って言っていたから、単純に考えても120年くらい経っていた家だったと思う。」

依頼主のお父様は新しい家を建てる時に、この大黒柱を建材のひとつとして使えたらという思いを持っていたそう。
「床の間は、前の家で使っていた材を使っています。他にもいくつかそういう場所があるけど、大黒柱は長さがちょっと足りなくて新しい家には使えなかったんだよね。」

大黒柱を新しい家に使えないことが分かった時にも、“家具屋さんに家具にしてもらうことができないのかな”という話をしていたそう。しかし、その当時は作ってもらえそうなところが見つけられなかったため、長い間軒下に置いたままになっていました。

庭のアカマツを伐る決意されたのと同時に、この大黒柱をつかって座卓を作る話が進んでいきます。材の取り方を考慮しつつ、ご希望のイメージをお聞きしながら、デザインを決めていきました。

製材してから見えてきた材の様子が、堂々としていたので存在感を残したかったという職人。一般的な天板よりも厚みを持たせ、通常行う“面取り”(天板の角を丸く削る)を極力行わずに直角に近い形を残しました。そのため、このケヤキが持つ力強さを感じることができます。

ケヤキは、硬くて耐久・耐湿性に強いことから日本では古くから建築資材や家具の材料として使われてきました。 しかし一方で、狂いやあばれが起きやすいという特徴も持っています。

年月が経っていても狂うことがあるというケヤキですが、この材は素直で扱いやすく、つくっていてとても楽しかったという職人。そんな材の様子からも、120年以上家を支えた大黒柱の姿を思い浮かべることができます。
「長い間軒下に置いておいたから、色が変わってしまったけど元々は黒光りしていたんだよね。こんな風に立派になると思わなかったから、本当に嬉しかった。」

樹齢約100年のアカマツと約120年間家を支えた大黒柱、どちらもご家族にとって特別であり、先祖の想いもたくさんつまったもの。そんな材料をつかった“家族をつなぐ家具づくり”に関わらせていただき、喜んでいただくことができたことが何より嬉しく思いました。

天板の裏に見える大黒柱の“ほぞの名残”。
かつてご家族の暮らしを支えた大黒柱は、ご先祖の歴史や古い家の思い出とともに新しい形でこれからも家族に寄り添っていきます。

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