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2021.08.05

薪ストーブは三度人をあたためる。暮らしの中心にある薪ストーブ

長野県伊那市は薪ストーブの普及率が高く、市内ではあちこちで薪ストーブの煙突がついた家を見かけます。
薪ストーブのある暮らしとは、どんなものなのでしょうか。ぼんやりとしたイメージはあるものの、なかなかはっきりとは見えてきません。

今回、薪ストーブを自宅で使っているやまとわの中村社長に「薪ストーブのある暮らし」について話を聞きました。

仲間とみんなでつくりあげた薪ストーブのある家

中村さんにとって薪ストーブのある暮らしのスタートは家づくりから。昔からの気心知れた仲間たちと作り上げていったという家づくりの話を聞くだけで、とっても楽しそうでワクワクしてきます。

中村さん : 新築と同時に薪ストーブを入れて12年になります。家のデザインの一部として薪ストーブを入れようと決めていたので。メーカーの既製品ではなくて、オリジナル。作ったんだよね。(長野県)小諸市にある鐵音(くろがね)工房にオーダーメイドで作ってもらいました。

オリジナルと聞いてびっくり、まさに世界でひとつだけの薪ストーブです。住宅全体の空間デザインとして置く薪ストーブは、どんな感じが良いのかを考えていたといいます。

中村さん : あったかいのはもちろんだけど、たくさん火が見えるように窓を大きくしたくて。「既製品を一切使わないで、失敗しても良いから自分たちのやりたいことをやろう」って、僕の20代の頃からの仲間とみんなで家づくりをした感じ。僕たちはストーブのデザインは出来るけど、機工みたいなところは素人なので、そこは鐵音工房さんにやってもらって作ったという感じだね。

薪の調達だけじゃない森林整備と仲間づくり

薪ストーブを使う上で、最も重要なのは薪の調達。中村さんは、西地区環境整備隊として一年を通して月に2回地域の森の整備を行い、薪を手に入れています。

中村さん : 長い間、財産区が所有しているマレットゴルフ場の整備を区で行ってきたんだけど、事故が続いてやらなくなってしまったんだよね。その結果、木がどんどん大きくなって真っ暗な森になっていた。そしたらある年、熊が小学校の学校林に出たんだよね。その頃から、整備しないと(この地域での暮らしに)影響があるからやらなきゃねっていう話が始まった。

最初は、薪の調達を主な目的として整備隊の活動に参加する人もいたといいます。薪ストーブユーザーとしてはもちろん薪の調達は重要なポイントですが、森を整備することで地域の景観が良くなるとともに、熊などの鳥獣害を防ぐことにもつながることなどを学び合う定例会議を整備隊で行っています。今では森を整備するだけじゃなく、小学校のPTA作業や地域の行事などの活動にも整備隊のメンバーで参加しています。

中村さん : 整備隊は薪ストーブユーザーだから、薪ストーブ囲んで酒を飲みながら自分のストーブの自慢話もする。薪割りの斧はどれが一番割れるかとかみんなで試したりして、仲間づくりとしては最高だよね。

薪ストーブが何度ももたらしてくれるあたたかさ

「薪は三度人をあたためる」というアメリカの有名なことわざがあります。薪ストーブでも同じように言われるそうですが、中村さんのお話を聞いていると三度ではなくもっと何度もあたためているように感じます。

中村さん : 三度あたためるというのは、色んなパターンがあると思う。薪を割る時、薪ストーブにあたる時、薪ストーブで作った料理を楽しむ時。山で薪を調達したり、森を整備する時もメチャクチャあったかい、薪を積んであたたかいっていうのもあるし。

薪ストーブがあることで地域や仲間とつながり、中村さんは「薪ストーブが暮らしの中心」と言っても良いほど豊かな生活をしているように感じます。
しかしながら、魅力的なポイントはたくさんあるものの、薪ストーブはスイッチひとつで着火できるわけではなく、部屋を瞬間的にはあたためることは出来ません。それでも使いたいと思う一番のポイントはどんなところなのでしょうか。

中村さん : ちょっと不便なところが良いんだよね。ローテクな「ザ・機械」ですみたいなやつが好きだったりするわけです。ローテクのすばらしさが震災の時に出たじゃないですか。電気も何もいらないっていうところがすごく良くて。燃料も自分で調達することが出来るし。それと、暖かさが違います。遠赤外線なので体の芯からあたたかい。

薪ストーブについて本当に楽しそうに語る中村さん

薪ストーブは相棒。中村さんの着火方法と薪割りの数

寒い朝、家族のために早く起きて薪ストーブの火をつけるという中村さん。どうやったら早くつけられるようになるのかを研究して、今では30秒で着けられる様になったといいます。

中村さん : 朝はやく起きて薪ストーブの火をつけることが割とワクワクするんだよね。着火名人になりたくて、今では家じゅうで俺が一番うまい。いろいろ工夫してみて、松葉などの着火剤を惜しまないことが大事だと気が付いた。

毎日丸太を3玉割っている中村さん。寒い朝でも薪を割ればすぐにあたたかくなって、頭がすっきりするといいます。

中村さん : 薪を割ることで体は確実に鍛えられるね。1日の消費量が分かっているから、消費量以上のものを作っておけばいいし、冬のシーズンが約4ヶ月なんだけど1日3玉も割っておけばそれ以上いける。朝の信州の澄み切った空気を吸いながら薪割りする、それが良いんですよ。

「残った灰を使うとピカピカになるんだよ」薪ストーブのガラス掃除には薪ストーブの灰が最適だそう

半径10キロ以内に必ず森がある伊那市。薪の調達も、薪ストーブの関係も整っていてインフラがしっかりしているので森林整備チームがあちこちに出来ています。

中村さん : ボランティア団体に参加して勉強することもできるし、伊那市には薪ストーブ屋さんと育成講座の両方があるから整っているんだよね。

終始楽しそうに話す中村さんからは、薪ストーブへの愛情がにじみ出ています。
便利さと快適さを求めがちな現代の暮らしですが、薪ストーブはちょっと不便なところが良いところ。そして、ストーブという道具としての役割だけではなく、人と人を結びつける魅力があり、家族の一員のような存在であることが分かりました。

薪ストーブのある暮らしは想像以上に何度もあたたかい。

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