読みもの・お知らせ
2021.06.01

馬のいる農場だからこそできる堆肥づくり、野菜づくり

ひと雨ごとに緑が濃くなり、植物がいきいきと成長しています。そんな生きものたちの姿は、生命の力強さを感じさせてくれます。

やまとわの農と森事業部は「夏は農業、冬は林業」一年を通して自然と向き合う仕事をしています。(やまとわの農業についてはこちらから)
今回“馬糞堆肥”の仕込みをすると聞き、作業の様子を見せて頂きながら農と森事業部の小瀧 誠さんにお話を伺いました。

土を知るところから始まった畑づくり

2年前、入社と同時に農業への挑戦をスタートさせた小瀧さん。それは同時にやまとわファームの始まりでもありました。現在、農と森事業部には3人のメンバーがいます。

小瀧さん :「まず土壌診断を行いました。最初の化学的な結果として分かったことは日本でよくある“酸性土壌”ということです。それまで管理していた方が過剰に肥料を施していた形跡はなく、比較的バランスの良い土壌。念のため、残留農薬も検査しましたがそれも一応全部クリアしているような畑でした。」

1年目は、未経験で初めてのことばかり。畑をやるのに肥料が必要なのかどうかも分からないまま、全てが手探りだったといいます。土壌診断をしてみたものの何をどのようにやったら良いのか分からず、あっという間に作物よりも草が大きくなってしまったそう。

小瀧さん : 「野菜って種をまけばほったらかしにしていても、ひとりでに育っていくんですよね。でも、“作物を売り物や商品にする”ために、もうひと段階上の作物を作るには、人の働きかけが絶対必要なんだなということを認識しました。」

2年目は栽培計画を立てることを意識し、出来なかったところを自分なりにやろうと奮闘します。その結果、最低限の草の管理はすることができ、草に追われてどうしようもなくなったという事はほとんどなくなったといいます。

同じタイミングで、やまとわファームの隣にパカパカ塾がやって来ました。
パカパカ塾とは、子供たちがポニーの世話をしたり、乗馬体験をしたりすることができる場所で、現在ポニーが4頭、馬が2頭います。子供たちは馬と触れ合うなかで、人や動物への思いやりや根気、働く意欲と喜びなどを自然に学んでいます。

場内で草を食べる馬。馬糞の状態が良いのはストレスなく過ごせている証拠。

馬糞堆肥づくりに挑戦

昔から、畜糞は身近な堆肥として農業に使われてきました。パカパカ塾がやって来たことですぐ近くに馬糞があるならば、使わない手はありません。パカパカ塾の馬糞を使った堆肥づくりの挑戦が始まりました。材料として、馬糞と馬の敷き床に使われているおが粉(細かな木くず)を使いましたが、なかなかうまくいかなかったといいます。

小瀧さん :「温度がうまく上がらなかったんです。水分量が足りなかったことと、気温が下がっていく秋に作業したことも原因のひとつだったのかもしれません。」

微生物の活性化に重要な原材料と水分調整。うまくいかなかった経験を生かし、今年は材料を工夫しています。

小瀧さん : 「馬糞と馬の敷き床のおが粉、近くの牧場の牛糞を使っています。牛糞を入れるのは、水分調節のため。堆肥化のプロセスの中で、水分調節ってとても大事なんです。」

湯気が立ち上がっているのは、発酵が進んでいるサインだそう。     

今年は堆肥を仕込む前に堆肥に関して知見を持った方の意見を参考にしながら、目標温度、回数、タイミングなどの目星をつけているといいます。

小瀧さん : 「途中どのくらいまで最高温度が上がってほしいとか、完成はどのくらいの温度を目安にするのか。切り返しの回数やタイミングも、知見のある方から受けたアドバイスをもとに目標を立てて、完成のイメージを持ちながら実践してみています。例えば、4回切り返しを行うというアドバイスを頂いたとしたら、5回目の切り返しをやるかどうかは、“完成温度になっているかどうか”や“堆肥の状態”を見て判断します。」

元のもとに関わる一次産業

小瀧さん : 「一次産業は根幹にかかわる産業です。最も小さな情報に触れているという“元のもとに関われる”というのが僕の面白いと思うポイントです。日々の観察がスキルアップのひとつ手段になるので、やり方が教科書やマニュアルにしづらく一朝一夕では身につきません。僕はもともと自力で何かするのが好きなので、性格に合っているように思います。」

微生物も植物もどれもがひとつひとつ違った生き物であり、人間の都合で一律に出来ることではありません。自然相手であるからこそ、日々の観察と経験との繰り返しであり、それがステップアップにつながっていきます。

材料を混ぜ合わせた後の馬糞堆肥。握ればひと塊に、振るとほろほろと崩れるのがちょうど良い水分量である証拠。

土の地力を向上させる

一般的に“自然に優しい”イメージが先行してしまいがちな有機農業。しかしながら、有機物がすべて環境に優しいわけではありません。例えば、土は富栄養化による環境負荷をおこすリスクもあり、肥えた土が水質を汚染してしまうこともあることは意外と知られていません。

小瀧さん : 「有機農業のメリットって環境配慮性や持続可能性などがあると思いますが、“異常気象、天候不順に対する土の対応力をあげていきやすい農法であること”だなと僕は思っています。土が持つポテンシャルを最大化したり、引きあげたりしやすい農法じゃないかなと。ミミズや微生物などそれぞれの生き物それぞれに役割があって、特に微生物の働きかけがないと作物が育ちにくいというのは、有機農業の大きな特徴だと思います。その中で、土壌分析をしていれば化学的な数値を把握できるので、過剰な施肥とか当然しなくなります。」

信州の伝統野菜「糸萱かぼちゃの苗」

“生物性”と“物理性”をベースに置きながら、リスクヘッジとして土壌診断という“化学性”を利用し、過剰施肥など良くない状況にならないように管理していくというのが今自分にできる方法なのかなと小瀧さん。3年目の今年は、地元で有機農業に何年も携わっている方に助言をもらいながら、これまでの経験観察力では気づくことができない部分のレベルアップをしていきたいといいます。

小瀧さん : 「今年は去年1年間で使った感性や集中力を、すでにこの4月、5月で使っている感じです。これまで意識して使っていなかった感覚、動物的なものに近いと思うのですが…例えば、土をちゃんと触ってみるとかにおいをかいでみるとか、ただ見るのでなくさらに近づいて見てみる。これはいわゆる五感を使うということ。気づく力や観察力を試されているとも感じる。その中で土が持つ可能性にワクワクしたり、目に見えない世界をイメージしたりすることが面白いですね。」

まず頭で理解するのではなく、五感を使って体感すること。それは生き物を相手にしている農業ならではの複雑さであり、面白さでもあります。

農と森事業部のメンバー 左から川内さん、宮原さん、小瀧さん

最後に、農業と林業両方の仕事に携わる小瀧さんならではの気づきを聞くことが出来ました。

小瀧さん : 「野菜栽培は一年で完結するような自然を相手にすることが多く、カレンダー通りにはいかない。それに対して林業はひとサイクルが30年とか50年で、農業と時間軸が全然違います。例えば一週間ずれたとしても、森にとっては誤差の範囲。農業を知ることで、森の寛容さに気がつきました。」

これから夏本番、全ての生き物が活発に動き始める季節。“ずっと続いていく暮らし”のために、地域の循環を見つめながらこれからも小瀧さんの挑戦は続いていきます。

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