西箕輪小学校6年とち組の皆さんと、総合学習の授業に関わらせていただいていました。
林業について興味を持ったこのクラス。学校の森の調査から、市への施業依頼、そして学校の森の木を使ってスプーンをつくりたいと、予算の調達まで携わるという、まさに授業というより1つのプロジェクトに関わっているような、そんな素敵な授業でした。今回は、その森の授業を簡単に振り返りたいと思います。
自分たちで伐った木で、スプーンをつくりたい
5年生の時に、社会の授業で林業に興味を持ったとち組の子供たち。もっと林業について知りたいと、6年生の総合学習でも林業について調べることになりました。(林業に興味を持ってくれてありがとう…!)
日本の森の現状などについて知っていく中で、ふと、自分たちの足元にある学校林は元気なのかな?と疑問に思いはじめたとち組の皆さん。自分たちで森の調査を行いました。その結果、手入れの必要性を感じた児童たちは、自分たちで提案書をつくって、伊那市へ整備の必要性を打診。市が動いてくれることになり、森林整備が実施されました。
私たちは、去年の夏ごろからこの授業について先生から色々とご相談をいただいていました。
「自分たちで伐った木で、スプーンをつくりたいんだけど、できるでしょうか…?」
森づくりから家具づくりまで行っている私たち。こんな嬉しい機会はないと、二つ返事でやらせていただくことになりました。あれもできる、これもできると、やりたいことが溢れてきます。しかし、私たちもボランティアで関わるのは中々難しいのが現状です。どうしても、予算を確保していただく必要があります。
授業にどれくらいのお金が必要になるのか、どうやったら予算を確保できるのか、先生は全て子供たちに伝え、子供たちが授業の方針を決めていきました。自分たちが作った手作りのハガキを販売したり、アルミ缶回収をしたり。
あと、今回は助成金も申請をしていただきました。この助成金の申請をするか否かも、とち組の皆さんが決めました。話し合いを進めていく中で、色んな意見が出たようです。
「自分たちの授業にこれだけのお金をもらうのは、もったいないんじゃないか?」
「自分たちに助成金が適していないとなったら、申請は受理されないんだから、とりあえず申請したい」
「人生最後のチャンスかもしれないし、自分たちで木を伐ってみたい」
話し合いを進めた結果、とりあえず申請してみよう!というのがクラスの総意になったようで、助成金を申請。無事に採択され、今回私たちが木を伐る所からスプーンをつくるところまでサポートをさせていただくことができるようになりました。
学校の森の木を伐る授業
せっかくなら、ぜひ自分たちの手で木を伐ってほしいという私たちの想いと、木を伐ってみたいという子供たちの想いが重なり、間伐体験の授業もやらせていただけることになりました。
道具は、ノコギリとロープのみ。子供たちの手で伐っていくので、どうしても時間がかかります。だけど、子供たちは根気よく1本の木と向き合いながら、真剣に手を動かしていました。
最後は、木にロープを引っかけて、先生と子供たちが一緒になって力いっぱい引っ張ります。すると、ミキミキッという音と共に木がゆっくり傾きはじめます。バーンッという音と共に木が倒れた時は、子供たちも、先生も、そして私たちも本当に嬉しくて、みんなまぶしい笑顔で歓声を上げていました。
この授業をするときに、先生から言われたことがあります。
「大人の人が、どんな想いを持って仕事に向き合っているのか、子供たちにも伝えたいんです。だから、質問タイムを作ってもいいでしょうか? 」
子供たちから質問をしてくれるなんて、願ってもいない機会です。そこで、授業と授業の合間に質問タイムの時間を設けることになりました。
「林業をやっていて楽しいことはなんですか?」
「木を伐る練習はどこでやっているんですか?」
「なぜこの仕事をしようと思ったんですか?」
可愛らしい質問が飛び交います。最初は、質問したい人が手を挙げて質問をするというスタイルだったのですが、授業が終わった後のことです。
「まだ木こりさんに聞きたいことがいっぱいあると思います。皆さん、質問したい人の所に行って、それぞれ質問してきてください。」
先生がそう話した後、我こそはとそれぞれの木こりの周りに集まり、口々に聞きたいことを聞いてくれる子供たち。こんなに聞きたいことがあったの!?とびっくりするくらい、みんなすごい勢いで質問をしてくれます。
(中には“好きなタイプはどんな人ですか?”と木こりに質問している人もいて、少し笑ってしまいました)
子供たちの純粋な想いに触れ、改めて自分がどういう想いでこの仕事を選び、この仕事をしているのか、振り返りながら話している木こりたちの真剣で少し照れているような表情も印象的でした。
自分たちで伐った木で、スプーンをつくる授業
いよいよ、自分たちが伐った木を使って、スプーンをつくる準備に入ります。先ずは、荒加工。自分たちが伐った木を小割にしていく工程です。
丸太の上にナタを置き、1人がナタが動かないようにしっかりと固定をし、もう1人がナタの背を目掛けて木槌で叩いていく。二人一組になって、作業を進めていきます。
「節のところはなかなか割りにくかった。」
「この木はスパッときれいに割れたよ。」
木の特性を五感で感じながら、スプーンを作るための角材を作っていく子供たち。試行錯誤を繰り返しながら、そして友達と力を合わせながら、きれいな角材を作っていきました。
次は、いよいよクラフトナイフでスプーンの形に削っていく作業です。森の中ではあんなに元気よく生き生きと動いていた生徒たちが一転、静かに真剣な表情で黙々と木を削っていきます。
「ジャムスプーンをつくりたい。お母さんと相談して大きさも決めてきたんだ。」
作りたいものを明確にイメージしながら、それを形作っていく。角材からスプーンを削り出すのは、そう簡単な作業ではありません。三次元でものを捉えイメージする力も必要になります。
やっぱり難しいかな…?と勝手に不安を感じていた私を他所に、どんどんスプーンの形を作り出していきます。
思い切りよく削っていく子供、慎重に慎重に作業を進めていく子供。後ろから見ていると、それぞれの性格が作業に現れていて、ほっこりしました。
しかし、スプーンをつくり上げるには時間がかかります。
先生と子供たちが、ある程度スプーンをつくるコツと、完成までのイメージができた段階で、この後の工程は先生にお任せすることになりました。
今まで学んだことの総まとめ。学習発表会
スプーンづくりはどうなったかな?無事にできあがったかな?と少し気にしていた頃、とち組の皆さんからとても可愛らしい招待状が届きました。
そして、先日の学習発表会。
私たち以外にも、伊那市役所の職員の方や、校外学習の時に訪れた製材所の方、地域の方々など色んな人が集まっていました。
緊張した面持ちのとち組の皆さん。しかし、発表会が始まると、子供たちは堂々と自分たちが調べたこと、感じたことを発表していきます。
総合学習で林業について学ぶというテーマを決めてから、日本の林業について知ったり、学校林の調査や整備をしたり。そして、地域の製材所へ足を運び、職人さんから話を聞いたり、実際に自分たちで伐った木を使ってスプーンをつくったり。限られた時間の中で、こんなにも沢山のことを学び、経験し、そして色んなものを感じ取ってくれている生徒さんたちの様子を見ていて、胸がいっぱいになりました。
肝心のスプーンも、会場に展示されていました。
スプーンだけでなく、バターナイフや箸と箸置きのセットや、和菓子を食べる時などに使う爪楊枝など個性豊かなカトラリーたちがずらりと並んでいます。どれも本当にクオリティが高く、よくここまで作ったなと一緒に同行していた職人さんも驚くぐらいの出来でした。
最後に、この授業の中で、とても印象に残っている生徒さんの言葉を紹介します。
「お肉などの命のある食べ物を残さず食べるということと、木を伐って使うということは一緒なんだなと思いました。」
木を命あるものと感じてくれたこと、そして食べる行為と木を伐ってスプーンをつくるという行為を結び付けて感じてくれて、その感想を聞いた時、本当に本当に嬉しかったです。
この授業の様子を傍から見ていると、“授業”というよりも、とち組のみんなで1つのプロジェクトを進めているような、そんな素敵な授業でした。そんなプロジェクトに関わることが出来て、本当に幸せでした。ありがとうございました。