長野県伊那市に伊那西小学校という学校があります。中央アルプスの麓にある小さな小学校です。この学校の校舎の目の前には、約1haほどの森が広がっています。やまとわでは、約2年間に渡りその学校林を活かした「学びの森づくり」のコーディネートをさせていただいています。そして、昨年度末には、学校林の施業を行いました。今回は、その施業の様子を綴っていきたいと思います。
(学びの森プロジェクトが誕生したきっかけや経過についてはこちらの記事をご覧ください)
「 小学校の森 」
約40種類以上の樹木が生い茂る多様性のある森。四季の移り変わりを身近に感じることができる、居心地のよい森です。しかし、色々な課題も抱えていました。
木の幹が腐朽しているものや道路に大きく傾いている木、極端に枝が少なく細々としている木など、「危険木」といわれる木も生えていました。
また、この森の上層木はアカマツとカラマツが占めていました。伊那谷では今、「松枯れ病」によりアカマツがどんどん枯れゆく運命にあります。松枯れ病とは、輸入材木の中にいたマツノザイセンチュウというセンチュウがカミキリムシを媒介に、アカマツに入り、枯らしてしまう病気です。昭和50年代に全国的に被害が拡大しましたが、今も被害は広がっています。そして、伊那西小学校の林間にも松枯れ病は広がっていました。
なので、今回は危険木の伐採と合わせてアカマツの3割択伐も提案・施業させていただきました。
アカマツを3割ほど伐ることで、その下に生えていたの広葉樹(サクラの類やコナラなど)に光を当て、将来的に広葉樹の森に変えていくことを狙いとしています。択伐というのは、森の中に生えている木を抜き伐りする方法です。ピンポイントで木を選び、伐採をするのでとても手間がかかります。
しかし、地域の人や子供たちの想いがたくさん詰まった森です。「ハートの形の葉っぱを付けるカツラは残してほしい」とか、「キハダやサンショウを残して、チョウの森をつくりたい」など、話し合いの中で色んな意見をいただきました。なので、残したい木の周りに生えている木をポインポイントで選木し、伐採する「択伐」を選びました。
「 森の施業 」
今回の施業は、農と森事業部が行いました。1本1本丁寧に、なるべく下層の植物を傷つけないように、細心の注意を払いながら、木を伐っていきます。
この小さな木が、30年後にこの森を支える木になるかもしれない。
森づくりは、遥か先の未来を見据えながら行います。
約70年に渡ってこの森を支えてきた木の命をいただく。
ある時は、小さな木をロープで引っ張って。
ある時は、倒す木をワイヤーで引っ張って。
慎重に、丁寧に、施業を行いました。
「 木の循環利用 」
また、授業の中で子供たちや先生にも、伐採現場を見てもらう時間をいただきました。
校舎の近くに生えていた1本のアカマツ。この場所に、新しく森の教室を移設する話が進んでいました。
せっかくなら、そのアカマツを伐って、製材して、森の教室に使いたい、そして、「この木がこの教室になったんだ!」という木の循環利用を伝えたい・・・。
校長先生に相談したところ、全校生徒に見ていただける機会をいただきました。
まず最初に、神事を。
「今までありがとう」「素敵な森の教室が出来上がりますように・・・」という想いを込めて、塩をまいてお神酒を上げました。
最後は、みんなで伐りたての切り株を見て触れて。
「わー、この木、先生よりも年上なんだね!」
「木が湿ってる!すごい!」
子供たちも先生も、生き生きとした表情で木と触れ合っていて、とても嬉しくなりました。
約2年に渡って行われたこのプロジェクト。
学校林の施業という大きな事業を無事に終えられて、ひとまずほっと一安心しています。
しかし、これからも伊那西小学校の森づくりは続いていきます。24年間かけた学びの森プロジェクトも続いていきます。
これからどんな風に森が成長してくのか楽しみにしながら、これからも学校や地域の人達と一緒に‟林間”と関わり続けていきたいと思います。
さいごに・・・
昨年度で定年退職をされた、元伊那西小学校長の二木先生。
学校を去る最後の最後まで、森の整備をされていました。
子供が歩きやすいように道路を整備して、腐りかけていた看板を修理して。
先生と一緒にこのプロジェクトに関わることができて、心から幸せでした。
本当にありがとうございました。