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2022.12.07

持続可能なものづくりを目指して。やまとわの新工場が完成しました

今年8月、やまとわの新工場が完成しました。

新工場では、主に経木の生産からパッケージ、発送を行っており、組み立てや塗装など家具の仕上げを行うスペースも備わっています。冬を迎え、本格的な寒さになった今、端材を燃料にしたウッドボイラーが毎日フル稼働。経木の乾燥のための温風をつくるとともに、床暖房でスタッフの足元をあたためています。

2階で経木を乾かす温風をバイオマスで賄っている。1階の工場の床暖房もバイオマス

36オフィスが現在の場所にできた約6年前から、構想があったという新工場の建設。
そこには「地元の森で育まれた木を使って家具をつくる」ことを20年以上続けてきた弊社代表中村の強い思いがありました。

使えないから使わないのではなく、使ってみる

工場の外壁に使われている木材は全てカラマツです。塗料を変えることでこんなにも個性豊かな表情になるんですね。

中村さん : カラマツにウッドロングエコを塗ると神代(じんだい)みたいな色になるよね。ウッドロングエコはカラマツとの相性がすごく良くて、しかもあまり使えないとされる白太が綺麗。使いにくいとされている白太(しらた)が神代木の色になるっていうところが素敵なんだよ。

白太とは、丸太の外側にあたる部分。それに対して赤身が中心に近いところになります。一般的に白太は赤身に比べると使いにくいとされていますが、なかでもカラマツは特にやわらかく、作った後の動きが大きいとされています。そのため、家具づくりや家づくりでは避けられる素材だそう。

新工場の入口。同じカラマツ材でも塗料で表情が異なります

36オフィスでも一般的には「使えない」とされている木がところどころで使われています。例えば、階段。昔は、街路樹として植えられることの多かったプラタナスという木を使っています。

中村さん : プラタナスは、根が弱く強風で倒れやすい危険な木だと言われていて、最近は伐採されることが多い。階段で使っているプラタナスは、弥生ケ丘高校で伐られた木でパルプになるという話だったもの。「捨てる」という予定だったものを買い付けさせてもらったんだよね。
やっぱり小さな木の見本帳だと分からない。しかも綺麗な木の見本帳はいくらでもあるけど、不良質とされる木の見本帳は本当にないから。使えないとされているものを「使ったらどうなのか」ということは使ってみないと分からない。使いにくいとされていても、目の前にあったらやっぱり使うじゃん。

使えないから使わないのではなく、使ってみる。
そんな実験的な要素がたくさんある新工場。ここを訪れる人に実際に見て感じてほしいと中村さんは言います。

合板の壁面。カラマツが多い中アカマツが化粧側に来ている部分もある。
ラベリングを見ると、JAS規格であることと、七尾工場で作っているということ、さらにフォースター制度もクリアしているということが分かる

どこに生えていた木で、どこでつくられたものなのか

建物の内部の壁面を見ると、合板仕上げでラベリングが化粧側に来ています。一般的には、ラベリングは見えないようにするもの。ここを訪れた人が時々「これはまだ途中でこの上に何か貼るんですね」とおっしゃることも。どうして、あえてラベリングを見えるようにしているのでしょうか。

中村さん : ラベリングをあえて化粧側に使っているんだよね。石川県の七尾に工場がある林ベニヤさんで作られている合板を使っています。昔、この地域のカラマツが林ベニヤさんに輸送されて、それをかつら剥きしたもので合板を作っているというのを実際に見学させてもらっていて。この地域の資源(木材)が、全国の建築資材として使われているということを、来てくれた人にも見て分かるようにしたかったんだよ。

暮らしのすぐ近くに森があっても、そこに生えている木がどのように使われているかについて、私たちは意外と知る機会がありません。

中村さん : 構造材は長和町にある小林木材さんのものがほとんど。東信(長野県の東部地方)でどこのカラマツが一番品質が良いかを知っていて、なおかつ信州木材認証を受けている材を扱っている工場なので、お願いしたんだよね。

不可能を可能にした 約20年の経験と地域の人とのつながり

工場を建設していた期間は、世界的に大きな影響を与えたウッドショックと重なります。新型コロナウイルスのパンデミックがきっかけで起こった木材価格の高騰。それによって、世界中で木材が手に入りにくくなりました。やまとわの新工場建設にも影響があったといいます。

中村さん : 工期の話でいうと3月末で引き渡し予定だったものが、実際には6月末になりました。材木が手に入らなかったことに加えて、材木が手に入ったとしてもプレカット工場で止まっていて順番待ち状態になってしまって。

そんな中、構造材の中でも大きな6mのカラマツを12本が必要だったにもかかわらず、なかなか手に入らなかったことがありました。さあ、どうしよう。中村さんは思い切った提案をします。

中村さん : 手に入らないなら、農と森事業部のメンバーと一緒に自分たちで用意しようって考えたんだよね。木を提供してくださった山主さんとは20年お付き合いをしていたから、あの山に良いカラマツがあるっていうのを知っていて。時間も限られている中、あちこち収穫に行くわけにもいかないから、1カ所で末口が28cm以上のカラマツを12本。“直材で揃っている山はどこか”みたいなのが、結構すぐにひらめいたんだよ。見に行ったらやっぱりある。
収穫して、なおかつ搬出もしやすいところが全部成立している場所に、その情報と人脈があったということは本当に良かったよね。

伐採に行ったのは12月半ば。雪が舞っていました

山へ行き、そこに生えている木から材を取れるかどうか考える。さらに、施業計画を立ててどういうルートで搬出するかまで考えるということは、長年の経験がないとなかなかできることではありません。

中村さん : 伐倒するだけではなく、どうやって木を山から出して来るかという搬出のことを考えて“この木の方が良い木だけど、搬出が大変そうだからこっちの木にしよう”“この順番で倒して行けば、搬出も楽だね”と考えた。
実は、冗談で言っていたんだよね。ウッドショックの影響を受けて材料が手に入らなかったとしても“自分たちで伐ればいいじゃん、何の心配もいらないよ”なんて。伐採に行った時、12月で雪が降っていたから寒かったんだけど、すごく面白かったな。こんな経験、なかなかできないから。

木材として収穫する目的で、60年以上前に人の手によって植えられた人工林のカラマツ。地域の木を使う家具づくりを続けてきた中村さんだからこそ、地域の木を新工場の構造材の一部にすることができました。

やまとわのチームワークで用意した構造材は、コントラクトルームの天井で見ることができます

生産の整流化をはかることで、働く人にとっても心地よい空間に

地域材を使って工場を建てることに加えて、作業の動線もスムーズになるように意識しているといいます。そこには、長年木工職人としてものづくりに携わってきた中村さんだからこそ、こだわりたい強い思いがありました。

中村さん : ものづくりって作り始める時に工程が全て分かっているということがすごく大事。二度手間がない、手戻りがないように。“半歩でも動きたくない”みたいな動線づくりっていうのを意識して、生産性を上げたかった。
なので、重たい丸太をできるだけ人の手で運ぶことがないような動線を意識したレイアウトになっています。いかに材木が重いのか、作業場が暑いとか寒いとか。木工職人として自分がずっと感じて来たからこそ、働く環境を整えるというのはすごく大事にしたいという思いがあったんだよね。

スタッフの働く環境を改善することは、商品を買って下さるお客様にもつながっていきます。

中村さん : ものづくりの先には必ずお客様がいます。無駄な動きを省いて動線を良くすることで、より良いものを作るための手間をかける。お客様に品質の良いものを届けていくということを一番大切にできるように、そんな動線を作りたかったんだよね。

木材の搬入口とつながる削り場。経木を削る機械が並ぶ
寒くなり、ボイラーがフル稼働。端材が燃料となり底冷えする床を暖め、スタッフが働く環境を改善

持続可能なものづくりを目指して

新工場の建設にあたって、新工場と旧工場の屋根にソーラーパネルを設置しました。数ある会社の中で、NPO法人上田市民電力の“相乗りくん”を選んだのはどんな理由があるのでしょうか。

中村さん : “どうぞみんなでシェアしましょう”っていうような考え方がすごく良いなと思ったんだよね。ソーラー発電をやりたいけれど、自分の家の屋根が北向きでできないという人に対して、“うちの屋根使ってください”というような助け合いの考え方。上田地域で生まれた活動なので、こういった取り組みが伊那でも広がると良いなと思って、お願いしました。

やまとわでは、昨年10月からハチドリ電力に切り替えています。 家具を生産している工場や、デスクワークをしているオフィスなどで使うすべての電力は100%自然エネルギー。ソーラーパネルを設置したことで、さらに自社の屋根で発電できるようになりました。

新工場と旧工場の屋根にソーラーパネルを設置

森をつくる 暮らしをつくる

地域材を使ったものづくりを続けてきたからこそ、ウッドショックの影響を最小限に抑えられた新工場の建設。完成までの背景には、中村さんのこれまでの経験と思いがたくさん詰まっていました。

「地道こそ近道」と話す中村さん。その言葉がまさに現実的になったような新工場を前に、“持続可能なものづくりとは何か”を改めて考えさせられます。

大きな節目となった新工場の完成。“森をつくる 暮らしをつくる”ことを目指すために、私たちはこれからも小さなアクションを積み重ねていきます。

私たちについて豊かな暮らしづくりを通して、
豊かな森をつくる

森の資源を使った楽しい
暮らしの提案を通して、
森と人の距離が近い未来を考える。
森と暮らしをつなぐ会社として
社会をよくしていく。