やまとわでは、無垢材を用いた家具づくりを行っています。
無垢とは、もともと仏教用語。「煩悩の穢れがなく清らかなこと」を意味しますが、そこから純粋であったり混じりけのなかったりするものを表すことに使われます。無垢材とは、一本の木から必要な形で切り出した木材のことを指します。
これまでやまとわで手がけてきたオーダーメイドの家具や、“pioneer plants”、“DONGURI FURNITURE”といった家具のすべてが無垢材を使っています。
なぜ、やまとわは無垢材家具を作るのか。無垢材家具のメリットについて、使う人と環境、ふたつの視点からまとめてみました。
(※ここでは、無垢の板を必要に応じて接(は)いで作ったものも「無垢材」と呼んでいます。)
素材そのままが人にやさしい
まず、使う人にとってのメリットはどんな点があるのでしょうか。
無垢材は、使用する形状で切り出した木材。そのため、木が持つ優れた性質をそのまま持っています。
湿度の調整をしてくれる調湿作用や、木目が持つ1/fゆらぎや香りの癒し効果、温かみのある手触りなど、人にとって心地よい素材であることは様々な実験からも分かっています。(参考/木の心地よさを科学する。5つの実験結果から見えてくる効果とは)
また、イスやテーブルなどに代表される家具は、仕事をしている時や家で過ごす中で私たちが毎日触れる身近なもの。直接触れることが多い家具であるからこそ、触り心地や見た目、使い心地がとても大切です。
さらに無垢材家具は、木肌のやわらかい手触りや木目の個性的な表情を楽しむことができます。元々一本の木から取った材なので、色も木目も同じものがなく、どれもオリジナルであることが特徴です。
また植物性オイルを塗って仕上げたものは、本来の木の性質を最大限に生かすことができるものの、使い込むうちに乾燥してささくれたり、汚れが気になって来たりすることも。そんな時、日々のお手入れや、湿気が多くなる梅雨前や乾燥する冬の前など、季節の変わり目のケアがとても大切になってきます。
万が一、傷やシミ、汚れがついてしまったとしても年月を経過することでその家具の“持ち味”になっていきます。
目をかけ、手をかけ、愛着を持って接する。それは、まるで家族の一員のよう。つやが出たり色が変化していったりする経年変化を楽しむことができるのも、無垢材の面白さのひとつです。
無垢材ではない木材とは
ここで、無垢材ではない木材について少し触れておきましょう。
無垢材は、木材そのものを使っているため、乾燥と湿潤を繰り返しているうちに反りや割れなどの“狂い”と呼ばれる症状が出てきてしまうことも。そういった狂いを抑えるためや、木材を有効利用するために様々な素材が作られてきました。
例えば、材木を薄く削ったものを、繊維の方向を変えながら何枚も重ねて接着剤で張り合わせた合板や、木材チップを粉状にしたり小片にしたりしてから再び固めるファイバーボードやパーティクルボード。身近なところでは、カラーボックスの板でも使われていますね。
用途や製法がいくつかありますが、こういった素材は大量生産大量消費の時代に生まれ、安価で手に入れることが出来ます。
しかし一方で、これらに含まれる接着剤などの薬剤が人の身体に影響を及ぼすこともあり、シックハウス症候群をはじめとしたアレルギー反応を起こしてしまうこともあります。
そして残念ながら、木が本来持っている調湿作用などの優れた性質を期待することもできません。
自然に還ることができる無垢材
次に環境の面から考えてみましょう。
接着剤などを用いた木材を作るためには、加工のために時間もエネルギーも使います。さらに家具としての役割を終えた時には、化学物質を含んでいるために処分方法が難しく、埋めるにも燃やすにも問題があります。
それでは、無垢材はどうでしょうか。無垢材は、これまで見てきたとおり木そのまま。役割を終えて最終的に処分する時、燃やしたとしても何も問題なく自然に還すことができます。
さらに樹木に吸収された二酸化炭素は、製材されて家具などに加工されても木材の中に炭素となって固定化され貯蔵されます。それらは燃やさない限り、光合成はしませんが炭素が大気中への放出を止めるという役割も担っているのです。
木は循環する素材
「木は伐っても植えて育ててそして使うことを繰り返せば、世代を超えて共有できる唯一無限の資源である」と言われています。なぜ“世代を超えて共有できる唯一無限の資源”と言えるのでしょうか。
木が木材として利用できるようになるまでに成長するには、約60年かかります。お爺さんが孫世代のために木を植えて、その子供や孫世代がそれを育てて使う。こういったことが、昔は多くの山や森で行われていました。
世代を超えて使うということは、家具を作ったり家を建てたりするために一度木を利用したら、最低でも作る側は“60年は持つようなものづくり”をする。さらに使う側も同じように、そのくらいの期間は丁寧に使っていかないといけないということが言えるのかもしれません。
私たちのまわりには安価で手に入りやすい家具が、たくさんあふれています。しかし目先のことだけでなく、ほんの少し先の未来や環境のことを考えてみる。さらにその選択が私たち人間にとってもメリットが大きいのであれば、背伸びすることなくできる選択肢のひとつになるのではないでしょうか。
人にも環境にも優しい無垢材家具を、暮らしに取り入れてみませんか。
【参考文献】
木組の家に住みたい!無垢の木で丈夫な家づくり 松井郁夫 発行所/彰国社
いい家は無垢の木と漆喰で建てる 神崎隆洋 発行所/ダイヤモンド社
暮らしの手帖 第5世紀17号/暮らしの手帖社