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2024.07.03

“INA VALLEY FOREST COLLGEとは何なのかー”事務局メンバーで振り返るフォレストカレッジ

2020年コロナ禍のまっただ中にスタートしたINA VALLEY FOREST COLLEGEは、今年5期目を迎えようとしています。

2年間のオンライン開催を経て、3期・4期は現地開催。4年間でのべ約1,000人の申し込みをいただき、受講後に伊那谷へ移住した参加者は家族も含めると約40名、関係人口として様々な形で関わって下さっている方も多くいらっしゃいます。 

これほど多くの人の心をつかんだ“INA VALLEY FOREST COLLEGE”とは、何なんだろうー

今期スタート前に、事務局の奥田と榎本、そして元受講生で現在はinadani seesスタッフの黒岩麻衣さん(1期受講生)、塚田里菜さん(4期受講生)の4名で伊那谷フォレストカレッジについて語り合いました。

コロナ禍のオンライン開催が育んだ
フォレストカレッジ独特のフラットな雰囲気

黒岩 : フォレストカレッジの始まりはコロナ禍だったんですよね。

奥田 : そう。開催前年の2019年の終わりごろに開催は決まっていて、そしたら2020年3月に緊急事態宣言が出されました。当初考えていた現地開催バージョンを白紙にして、全てをオンライン講座に変更しないといけなくなってしまったんですよ。

塚田 : それは大変でしたね…榎本さんは、その時どういう思いでいたんですか ?

榎本 : 私は、その段階ではまだINA VALLEY FOREST COLLEGE(以下、フォレストカレッジ)という構想がちゃんと理解できていなかったんですよ。さらに「コロナ禍でどうするんだろう ?」って、どこか主体性がなかった。本当に先のことが何も読めなくて、コロナもフォレストカレッジもどうなっていくのか分からないっていう状況だったので。

奥田 : 大事だよ、主体性(笑) 

榎本 : ただただ、これからどうなるの?っていう感じでした。
1期目は準備にすごく時間かかったので、申込みから締め切りまで時間もなくて「申込みがちゃんと来るのかな?」と心配で。だけど、蓋を開けてみたら選考が必要なくらい、たくさんのお申し込みをいただいて、すごく嬉しかったのを覚えています。

奥田 : 40人の枠に参加希望者が160人くらい来ましたね。

塚田 : えぇ ! そんなに。

“森✕教育”オンライン講座(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2020)

黒岩 : 私はその1期目に参加したんですけど、講座は全てオンライン。受講期間中には一度も現地には行ってないんです。
もう細かいことは忘れつつあるんですけど、「フォレストカレッジ楽しかったな〜 ! 」ということだけはとても印象に残っています。でも、どうしてあんなに楽しかったんでしょうね ?

「森✕○○」様々な切り口で講座を行った(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2020)

榎本 : つながり感もあるのかな。コロナ禍で外出する時はマスクをしなくちゃいけなくて、人とのつながりが希薄になっている中、講師による本講座のほかに課外授業と題してテーマを変えた自由参加のイベントを毎週やっていましたよね。そこへ行けば森のことについて話せるみたいな。

奥田 : 本講座6回に対して、この課外授業を10回くらいやりまして。もう毎回参加してくれる人とは毎週ペースで会ってたから、本当に身近な感じがしました。

黒岩 : フォレストカレッジにはバックグラウンドが全く違う人たちが集まっていたんですけど、不思議と遠慮せずに思ったことを話せましたね。木こりさんや行政で森林に関わる仕事をしている専門家の人たちもいたけど、「こんなこと言ったらアホだと思われるかな ?」とか、全く気にしなかった。

6つの本講座のほかに行った課外授業(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2020)

黒岩 : あとは「たくさん手をかけてもらったな」と思っています。
オンライン講座ではグループディスカッションの時間もたくさんあったんですけど、奥田さんがいきなりブレイクアウトルームに「どうですか ?」って入って来て、何か言い残して出ていくんですよ(笑)。あれはその場の空気とか、話題になっていることを聞いて回ってたんですか?

奥田 : そうですね。皆さんが何を知りたいのか、どんなことに興味を持ったかを知りたくて、次々とチェアマンのようにグループを周っていました。そこで盛り上がっている話題があれば「じゃあ、次回それをテーマに一緒に対談しましょう」ってその人を先生にして課外授業をして。

黒岩 : 講座以外でも、「こんなことやってみたくて…」と相談をしたら、「ちょっと話しますか」と言ってくれて。私のモヤモヤとした話を聞いてもらうだけで、何も生まれない時間の方が多かったと思うんですけどね。 ありがたいなあと思っています。

奥田 : 単純に嬉しさですよね。やる気の芽が出ているわけじゃないですか。僕らがやっていることに対して、何かしらのリアクションがあるっていうのは本当に嬉しい。講座を受けて「ありがとうございました」というよりは、「ここで悩んでいます」っていうのはそれだけでかなり可能性があると思う。

“森✕まちづくり”グループディスカッション後の共有(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2020)

奥田 : フォレストカレッジってなんなのか?と考える時に「臆せず行ける」「前向きに話せる」というのがありますよね。
専門家に教室で「はい〇〇さんわかりますか?」って当てられたら、「間違えたくない !!」みたいな空気って社会にたくさんあって。何か発言した時に、どう評価されるのかが分からないという怖さってあるじゃないですか。

塚田 : その感じ、分かります。何かのオンライン講座を受けていた時に、受講生が質問や補足コメントをどんどん入れていて。「どうしよう、全然分からない…」って怖くなった経験があります。
発言するにも間違えたらどうしようって。ジャッジされている ?とか、何でそうなるんだろうって思われないかな、みたいな。

奥田 : 「森でこんなことやったら面白いね」って言った時に否定せずに「いいじゃん、いったんやってみたら ?」って。フォレストカレッジには、専門性を必要とするような雰囲気がなくて、フラットな雰囲気が自然と作り出されていたように思うんですよ。

塚田 : そういう場を意識して作っていたんですか ?

奥田 : 自分が過去に受けたオンライン講座があまりにも面白くなくて。
受講生は一方的に講師の話を聞いて、宿題が出て終わりみたいな。講座のアーカイブがもらえたので、リアルタイムで参加する意味がどんどんなくなって、最初20名だった参加者が最後には4名になってしまったんですよ。

黒岩 : それは切ない…。

奥田 : 受動的に聞いて自分が話す機会がなく終わってしまうということを自分で体験したので、その“不快”をどうやって“快”に変えるのか。参加している人みんなが話す時間を増やすということは心がけていましたね。

フォレストカレッジ1期に行った課外授業から生まれた動画“山と、森と、木と、暮らす”
クリエイターとコピーライターの受講生ふたりで作りました

黒岩 : グループに分かれてディスカッションする時、ファシリテーターを受講生に任せていましたよね。なぜか私に結構回ってきて…やったことなかったし、どちらかというと苦手なんですけど、バトンを渡されたから「よっしゃ !」って張り切ってやっていました。そういう面でも運営と受講生の境界が曖昧でしたよね。

奥田 : 自分で手を挙げるのってしんどいですけど、やってって言われたらやれることってあると思うんです。
本講座には毎回、全国からお呼びした講師だけでなく、フォレストカレッジ協議会のメンバーにも入ってもらいました。外部講師と地域のプレイヤーが対談することできっとお互いに学ぶことがありますし、その方が面白い。

榎本 : 受講生同士のグループディスカッションにも、講師や地域プレイヤーの皆さんにも入っていただいて。そういうことで、フラットな雰囲気が徐々にできていったのかもしれないですね。
何でも面白がる空気感があって、私もすごく話しやすかった。こんなことお金にならないよな~と思うようなことも、面白がってくれる人がいたから「可能性あるかもしれない ?」って。

黒岩 : そうそう、みんな前向きな雰囲気でしたよね。誰かが何か言ったことに対して、「いいね !」って言ってくれる感じ。だから安心して調子に乗っていくという(笑)。毎回とにかく楽しくて仕方なかったですね。

本講座最終回の様子(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2020)

ようやく実現した現地開催
やりたいことを全部詰め込んだ3期、4期

焚き火交流会(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2022夏)

2年間のオンライン開催中、講師の話を受講生が聞くという一方向の関係性ではなく、参加した誰もが自分の思いを遠慮せずに発言できる雰囲気が作られていたフォレストカレッジ。
2022年、ようやく伊那で現地開催することができました。

榎本 : オンライン開催も楽しかったけど、やっぱり現地でやれるって決まった時は、ものすごくワクワクしていました。ようやくできるっていう思いがとても強かったな。

奥田 : コロナ禍でオンラインセミナーが増えた中、せっかく現地開催できるなら無難に終わらせずに思いっきり楽しんでもらいたいという気持ちが一番にありましたね。だから最初の会議で榎本さんと唐木さんに「厳しい感じにしたいですよね」って言った気がします。それは、参加しやすさを優先するのではなくて、本気でやろう !ってことなんですけどね。
せっかく伊那まで来てくれる受講生に「帰るのが惜しい !」と感じてもらえるようにしよう。だから、2泊3日を2回開催して、本気で森の充足感を伝えたかったんですよね。

企てるコース(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2022夏)

榎本 : 企てるコースでは、鳩吹山に登ってマウンテンバイクで下ったり、染色をしたり。働くコースは、木を伐るだけでなく薪にして山主さんのご自宅までお届けした。両コース合同でやった焚き火交流会や、進徳館での振り返りもとても良い雰囲気でしたよね。

働くコース(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2022秋)

塚田 : 私は4期の現地開催参加だったんですけど。その頃、仕事以外のことで外に行って何か勉強したいなと思って、色んな講座を調べていたんですよね。
組織の外で活動することは、普段の関係性を離れるのでそれはそれで楽しいと思うけど、自分が普段いる場所でのステップアップを目的としているような講座が多くて。

黒岩 : そうだったんだ。

企てるコース 鳩吹山へ(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2023夏)

塚田 : パワーアップはしそうだけど、私はマッチョになりたいのか ?と自問する自分も居て。自分に向き合って何か新しいものを得たいという気持ちはあって、その矛先に悶々としている時にフォレストカレッジの参加募集を見つけて。自然の中で自分に向き合うのもいいかなと自分を和ませる気持ちで参加しました。けれど、想像以上に衝撃的だったんです。

奥田 : 想像以上に ?

塚田 : 単純に「自然のことを好きです。」ということだけではなくて、自然のことを真剣に考えていて、世の中のことを物事の循環とか、そういう文脈で考えている人がいるんだなということに、とても驚きました。

塚田 : それまで、ビジネスとか仕事の本質って何だろうと考えていたけど、そこを外れた自然と人間、循環とか。今までにない初めての感覚だったからこそ「なるほど !」って新鮮な気持ちで聞けたし、皆さん“自然が好き”という共通項がある人たちだったので臆せずにたくさん話すことができました。森の中っていうことも良かったのかもしれない。

奥田 : それは嬉しいですね。
現地講座でも一方的に講師の話を聞くだけでなく、森歩きをしたり、焚き火を囲んで話したり。伊那に来てくれた人たちがリラックスした状態で、いかに人と人が混ざれるかということは意識していました。

黒岩 : 私は3期と4期の開催時には、交流会の料理を作らせてもらったんです。「森の中でこんなことできたらいいな」と思い描いていたことが、現実になって本当に嬉しかったです。

伊那谷の野菜を使って黒岩さんが作った彩り豊かなお料理(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2022夏)

塚田 : 榎本さんはスタート時に主体性がなかったと言っていたけど、4期目に参加した時に全然そんな風に感じなかったです。その間の変遷はありそうですね。

榎本 : そうですね、だんだん。最初は単純に「友達を作ろう」というスタンスだった。こんなにも森のことに興味持ってくれている人達が全国にいるなんて、嬉しいなっていう気持ちが大きくて。
だから「興味があったら一緒に森に行こうよ」「伊那を紹介するよ」って。そこから何か皆さんがやりたいこととか、何かつながりが出来たら良いなって思っていた。

焼きペンを使って手づくりした木の名札(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2022夏)

黒岩 : そういう感じでいてくれたから、変に様子を伺ったり、遠慮してしまうような気持ちが全く湧かなかったのかもしれませんね。上下なくフラットな雰囲気だったから、自分自身ののびのびとした感じとか、主体性が出てきたのかもしれない。

榎本 : 受講生も講師も、協議会の皆さんも。そこにいる人たちがみんな楽しそうにしていたのが何より嬉しかった。現地開催でやりたいことは全部やりたいと思って、私も気合を入れすぎちゃってへとへとになったんですけど…

奥田 : 「輪切りにした木で受講生のネームプレートつくりたいんです…」って榎本さんから相談があって、「それいります ?」って聞いたら「うー、やりたいんです」って言ってましたよね。ならやってみたらいいね、無理しないようにって伝えて。

榎本 : 皆さんにも手伝っていただきながらなんとか(笑)
黒岩さんにお料理をお願いできたこともそうだし、出会った時は受講生と運営側という関係だったのが、いつの間にか“仲間”になっている。回を重ねていく度に、“仲間”が増えていく感じが何よりうれしくて、フォレストカレッジをやっていて良かったなと思う。

進徳館にて(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2023秋)

doingよりもbeingのフォレストカレッジ
“森に関わる100の仕事をつくる”

黒岩 : フォレストカレッジには“森に関わる100の仕事をつくる”というコンセプトがありますけど、それが強制される感じはないですよね。

塚田 : そのためにどうする ?というのは、なかったよね。

奥田 : 事業計画って作らされるものではないと思っていて。限られた時間の中で、自分のアイディアを無理やり考えることが良いことなのかっていうのは、難しいですよね。

黒岩 : 「ゆだねられている」と感じたから、自発的になれたのかな。
“100の仕事をつくる”と掲げてはいるけど、それに向けてみんなが何かするわけではなく、「やるかやらないかはあなた次第」みたいな。

奥田 : 黒岩さんが受講してから3年後に伊那に移住して来ているじゃないですか。inadani seesのスタッフとして運営に関わっていて、フォレストカレッジの仲間でシャンプーを作っているっていう。それでいいじゃんみたいな。塚田さんは、1回目のフォレストカレッジの2カ月後に来ているし(笑)

塚田 : 他にもそういう人がいて、私だけではなかったっていう…(笑)

赤松の葉を蒸留して作ったヘアケア商品”sa-sa OYORINA”  
黒岩さん含むフォレストカレッジ受講生ら4名で活動する「森の素材ラボ」が商品化した

黒岩 : そう考えるとフォレストカレッジって、doingよりもbeingの部分が大事だったのかもなと思いました。
事務局の皆さんが「何をしたか」ももちろんだけど、どんなスタンスで、どんな風に受講生と関わるかという「あり方」があの場に滲み出ていたんじゃないかなって。
講座の前に立つ人って、どこかしらに権威性を感じることが多いですけど、いい意味でそういうのを全然感じさせなかった(笑)。

榎本 : その場で参加者の空気感を見てそれを引き上げてみたいな感じなので、決まっていないことも多いですよね。あらかじめ決めておいたことを決めたとおりにやるみたいな、マニュアル化はし過ぎていなかったと思う。でも、最初から流れとかやることをガチガチに決めておいた方が安心なんですよね。

塚田 : 答えがあった方が安心する。それに慣れちゃってるから余計に。仕事していて答えがわからないとめちゃくちゃ不安になることってよくあります。目的やゴール、そしてその道筋を明確にすると安心するけど、「こうなればいい」っていう目的自体が明確ではないものも、実際はあるなと思いつつ。

奥田 : 難しいかもしれないけど、結果まわりまわってそのことが安心につながるのかもしれないですよね。場を見ながら臨機応変に対応していく。例えば、お笑いの「お客さんを見てネタを決める」っていう。そんな感じと似ているのかもしれない。

塚田 : 今年はどんなフォレストカレッジになるんでしょうね。

榎本 : やっぱり一番は、皆さんと森の中で焚き火を囲んでしゃべりたいな。来ていただいた皆さんに伊那の森を楽しんでいただけるように準備をして待っています。

黒岩 : 楽しみですね !

焚き火交流会(INA VALLEY FOREST COLLEGE 2023秋)

安心できる空間だと、人の想像力が育まれるー
受講生、講師、運営スタッフ。そこにいるすべての人達が一体となって作り上げる″フラットな空気”がフォレストカレッジにはあります。

今年のフォレストカレッジのコンセプトは、「森と関わる視点をつくる」。
加えて、森で働くコースは「森で働く視点をつくる」、森で企てるコースは「食から視る森の企て」というテーマを設けています。2泊3日を2回、どちらも初日と最終日は2コース合同で森歩きや焚き火交流会をしたり、振り返りをしたりします。詳しくはフォレストカレッジのwebサイトをご覧ください。

フォレストカレッジに参加して、誰もが語りたくなるような場を共につくりませんか?

INA VALLEY FOREST COLLEGE 2024
■募集期間 : 7月3日(水)~7月31日(水)
・参加費 : 一般 15,000円(税込)、学生 10,000円(税込)
 ※現地までの交通費・宿泊費は参加費に含まれません
 ※プログラム内で予定されている交流会費および企てるコースの食材費等は別途かかります
・定員 : 森で働くコース 10人
    森で企てるコース 14人
 ※応募者多数の場合は、参加志望理由等を参考に選考させていただきます
■開催日について
オリエンテーション(オンライン) : 8月20日(火) 19:30~21:00
現地講座① : 9月21日(土)~23日(月)
現地講座② : 11月2日(土)~4日(月)

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